ジュエリー生まれ変り日記

最近読みました(Vol.1)

【不定期連載 社長’s Bookレビュー】

『小説 田中久重』 童門冬二・著 (集英社インターナショナル)

日本の工業がまだ工業と呼ばれていない時代、製品の全ては職人の技によって手造りされていた。明治以前はそんな時代で、べっ甲職人や飾り職人もその頃生まれた。

べっ甲職人は当時は櫛やかんざしなどを、それはその頃の装飾品の代表で、裕福な家や大名家などが購入していた。
飾り職人の分野も広く、刀剣類のパーツやかんざしなど細かな装飾品の全般を製作していた。
彼はそんなべっ甲職人の子供として生まれ、製作工場を遊び場に、見よう見まねで自然に物造りを身につけることが出来た。

そんな時代の背景と、彼を取り巻く人々との出会いとをおり交ぜ、最初の頃はからくり小箱くらいしか造らなかった彼が、機織りをしている女性の織物の柄の相談を受け見事に解決し、はじめての大きな発明をする。

彼の代表作である初期の作品に、現在でいうロボットと言ってもよい「茶運び人形」がある。お盆の上に茶碗を乗せて茶を運んできた人形が、飲み終わってまた茶碗を盆に戻すとくるりと向きを変えて元来た方に帰っていくというものである。

この作品によって「からくり儀右衛門」としての名声を得、その後の発明が日本工業の基礎を作ったといってもよい田中久重(儀右衛門)の生涯を書いたドキュメンタリー小説である。

勿論彼だけが人形を造ったわけではないが、当時からくり技術者の三本の指に入り、後に和時計や、花火、鉄砲や大きなものでは大砲、蒸気船や蒸気機関車など、現在にも通用するメカニックなもの全てに彼は関わったと言っても過言ではないと思う。
彼の東京での工場は後の東京芝浦電気で、現在の東芝であることは実に興味深い。


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Archive