最近読みました(Vol.10)
|【不定期連載 社長’s Bookレビュー】
『無事、これ名馬』 宇江佐真理・著 (新潮社)
『小説新潮』2003年9月号初出。
以来、不定期で2005年2月号まで連作された時代小説である。(まとめてハード化された。)
町火消し「は組」の頭の家に武家の長男が弟子入りし、7歳の時から成人するまでを、色々な人情を絡めて描いている。町火消しの頭はその時55歳で、「は組」の頭の半生記にもなっている。
鳶職で町火消しの一家の日常であれば、当然のように事件としては火事であったり、一人娘の成長であったりするわけだが、これが実に生き生きとしていて面白い。
1718年(享保3年)、いろは48組が編成された。
が、「いろはにほへと」と全てあったわけではなく、へ・ら・ひ・ん等使われていなくて、へ組みは「百組」、ら組は「千組」、ひ組は「万組」、ん組は「本組」に変えられていた。そんな理由も分かって面白い。
時代物小説は肩がこらない。
本作も、心地よい人情娯楽小説に仕上がっていた。
時代劇でも観るように、映像が観えてくるように読み進められるのは、やはり作者の手腕と文体のリズムによるもので流石である。
タイトルの『無事、これ名馬』も、最後の方で何とよい言葉であろうと分かったりする。
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