最近読みました(Vol.5)
|【不定期連載 社長’s Bookレビュー】
『人は見た目が9割』 竹内一郎・著 (新潮新書)
タイトルは「人は見た目が9割」と謳っていて、何かその題名だけで全くその通りだろうと思い、読まなくても内容が想像出来そうな気がした。
しかし「はじめに」の書き出しを読んで、これは「言葉以外の伝達」、いわゆるノンバーバル(=非言語的)コミュニケーションを研究した、結構大変な面白い本であることを知った。
新書で190ページほどの薄い本であり、すぐ読みきってしまう。
書き出しの最初の方にアメリカの心理学者の研究成果が載っていて、「見た目、身だしなみ、仕草、表情 55%」とあり、何だ 見た目が半分ではないかなどと思ったりするが、「声の値(高低)、大きさ、テンポ 38%」「話す言葉の内容 7%」などが続き、見た目に比して余り言葉が当てにならないことが解る。
地域での方言の好き嫌いのデータなども書かれていて、地元の方言が好きな者は郷土愛が強いと書かれており、では何故そうなるかということもよく解る。
また、マンガの構図や人物の表情などについてもよく説明されていて、マンガこそ実に見た目勝負の世界で—勿論ストーリーなどの問題もあるが—そこで面白さが決まってしまう理由なども割合多くのページ数を割いて説明されている。
ノンバーバルコミュニケーションという研究はアメリカで発達して、何か我々日本人から見ると大袈裟で気恥ずかしい彼らの身振り手振り、その彼我の違いもよく説明されている。
「見た目」については、自分が人に見せるためばかりではなく、私たちが能動的に目にするもの、受動的に目に入ってくるもの全般に渡って説明されている。
従って映画や演劇などについても色々な面から説かれ、加えて行儀作法なんかについても、長い間かかってなぜその作法が出来上がってきたのかがよく解るようになっている。
最初にも書いたが、タイトルの簡易さと本の薄さでつい見逃してしまいそうな一冊ではあるが、その内容は実に、心理学の「言葉以外の伝達=ノンバーバルコミュニケーション」を研究した、ハードカバーに負けない豊富な内容に仕上がっている。
ぜひ一読をお勧めしたい。