ジュエリー生まれ変り日記

最近読みました(Vol.13)

【不定期連載 社長’s Bookレビュー】

『限界集落-Marginal Village』 梶井照陰・著 (有限会社フォイル)

僧侶で写真家でもある著者が足で集めたフォト・ルポルタージュである。

新潟県佐渡ケ島を始めに、山梨県や熊本、長野、山形、北海道—。
徳島、東京、和歌山、石川、京都とそれぞれの村落を訪ね、そこで生活する人々の話をまとめている。

「限界集落」とは、65歳以上の人が人口の50%を超えた集落のことで、社会的共同生活の維持が困難となり、いづれ村落自体が消滅してしまうかもしれない集落のことをいう(のだそうだ)。
写真と文章でまとめられた13の集落を見ていると、こんな日本の景色が、まもなく観ることが出来なくなってしまうのかもと思われて淋しい気持ちになる。

写真家でもある著者の切り取った写真はどの風景も大変に美しく、それぞれの集落をよく表している。
人物の写っている写真を観ていると、その人の裏側の生活までが目に見えるように感じられる。
山側の、ある集落は、老齢になる前は活気もあって、熊や猿など近づくのが憚れたのではないかと思うし、山の動物を人間社会に近づかせない暗黙の教育も行われていたのではないかと思われる。
老齢と共に集落の活力がなくなって、山から来る動物を山へ押し返す力が失せてしまえば、いずれきっと、森と人間社会との境界線がなくなり都市部にすら進出してくるかもしれない。

あとがきでは、「今後10年以内に423の集落が消滅する可能性がある」と記されている。

僧侶でもある著者・梶井の文章は淡々としているが、美しくあたたかい。
良い本に接した。


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