ジュエリー生まれ変り日記

最近読みました(Vol.11)

【不定期連載 社長’s Bookレビュー】

『死亡推定時刻』 朔立木(さく たつき)・著 (光文社文庫)

中2の少女の誘拐事件から始まるこの物語は、本当に実際に起こった事件のドキュメンタリーかと思わせるリアルなタッチで書かれていて、最初から最後までそれこそ息もつかせぬ迫力で読ませてしまう。

誘拐事件と言えば、警察の捜査や、誘拐犯との駆け引きであったりする物語が多い中にあって、ちょっと違った角度から描かれた推理小説とも言えると思う。
この手の作品の性質上、あまり多くは書けないのだが、誘拐された少女が殺されたのは、それは身代金受け渡しの前であったのか後であったのか…。
表題の『死亡推定時刻』がまさに核心となって物語は展開していく。

死亡した少女を山林で発見した26才の青年。ついついの出来心から、小額の金をそのバッグから盗んでしまう。故に遺体発見の件を警察に届けることはしなかった。
そして、財布に残した指紋から、青年は誘拐(殺人)犯として逮捕されてしまう。
警察の取調べや検察への送検、普通私たちは知ることがない調書の取り方(取られ方)、そして裁判へと至る経緯が、事細かに実に詳細に描かれる。

時に裁判員制度が始まろうとしている。この本はそんな今こそ多くの人に読んでもらいたい一冊と言える。
冤罪事件は今も起こっている。
それは殆どでっち上げ、警察の自白強要によっている。

物語の第二部、一審時の弁護士とは全く性格の違う弁護士の、それこそ頭の下がるような努力によって控訴審は開かれるが、担当する裁判官や検事、そして証言者によって裁判とはこんなふうになってしまうものなのかという事がよく解る。
警察の初期捜査には万全を期し、正確な調査と事実の追求を願うし、裁判においては原理原則「疑わしきは被告人の利益に」を貫徹してもらいたい。
とにかく、冤罪だけは起こらない事を切望してやまない。

(管理人注: この物語はフィクションとは言えないだろう。冤罪は現に起こり、縷々報道されてもいる。
この小説に登場するような裁判官、検事、いい加減で不真面目な弁護士、しかしまた、冤罪を防ごうと真摯に努力する真の意味での弁護士、こういった人たちは現実に、本当にいるのである。
最後に、被告人が選任弁護士に宛てた手紙が出てくる。私はしばらくの間涙が止まらなかった。
自信を持って一読をおすすめしたい一冊。)


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

Archive