最近読みました(Vol.9)
|【不定期連載 社長’s Bookレビュー】
『エル・ドラド』上・下 (『GMO』改題) 服部真澄・著 (新潮文庫)
先日のNHKスペシャルの番組にて—。
ブラジルのアマゾン流域で原生林を切り拓き、大豆の栽培を進めていて、それにアメリカの大手商社が資金援助を行っており、全生産量をその資金の返済に充てるべく生産者を縛っていて、後発の日本商社(丸紅)が買付けに苦労しているといった事が報道されていた。
その中で、早くから大豆生産を手掛けて商社の資金援助を必要としなくなった大手の生産者は、次の作付けから遺伝子組み換えの大豆で生産量アップを図り、買付けに進出している中国や日本の商社と”生産者独自の価格”で自由に交渉したいといった報告がなされていた。
その番組と前後して、『GMO』上・下巻を完全に読むことが出来た。
とにかく大変な長編である。
南米ボリビアを舞台に、遺伝子組み換えのブドウからワインを作ろうといった計画が持ち上がりコカノキ栽培農地が目をつけられる。
コカノキを枯らすことが出来れば、それは同時に麻薬のコカインの撲滅をも達成する。
そのために遺伝子を組み換えて、コカノキのみを枯らす益虫、というか害虫を送ろうとする。そしてそれをばら撒き…。
現実に10センチ近いクワガタなどが売られていたりするのだから、将来或いはといったことを迫真をもって想わせる。
遺伝子の組み換えはあらゆるもので研究されていて、特に私が印象に残ったのは、農作物の種子などにおいては”一回限りの発芽”に改良してしまい、一度その種で作物を作り出したら毎年その種子を扱う商社から購入しなければならなくなるだろうということである。
その種から新たな種を取ることなど商社が許すはずがないということだ。
現在すでに除草剤で枯れないコーンや大豆など、日本の稲等でも研究が続いているのだから、神の領域といってもよい分野に将来も含めてどこまで踏み込んでよいのか。
本当に安全な食物を手にしたいものだ。
読み終えてそんな暗澹たる不安が残る、そんな作品だ。